panachoの日記

辺境アジアからバロックオペラまで

172番はどうでもいいが、131番をこれでは。


  宇野功芳(こうほう)が亡くなっていた。今月号のレコ芸をみて、知った。86歳か5歳。そういう年で元気だと死なないのではと思ったりもする老人たちもやはり死ぬのだった。宇野は日本を代表する偏屈音楽評論家兼実践家だった。
  というわけで7月号(先月号)のを借りて帰ってくる車中、FMでバッハのカンタータ131番をシュヴェチンゲン音楽祭でカントゥス・ケルンが演奏したのが流れるのである。指揮はコンラート・ユングヘーネル。ケルンにはコンチェルト・ケルンという合奏団体もあり、おそらくこっちのほうが評価が高い。我輩もユングへーネルに感心した記憶はない。
  実際、トランペットとティンパニーの壮麗な序曲ではじまっているのに、ぱっとしない。全編パッとしない。曲が悪いのかと思っていると、次は131番。これは正真正銘の、宗教音楽全体のなかでも頂点をなすような傑作である。とくに第1、第2曲は宗教的叙情の粋である。
  ところがヘーネルは、若干面白いところもあるのだが、やはり残念だった。歌手は悪くないように思うが、器楽合奏インパクトがない。この傑作をなんと思っているのだろう。
  疲れているのだが、家でカラスのサンサーンスを探して、聴いてみた。この、あなたの声で私の心は開くという曲は名曲なのでいろいろ録音されている。先日買ったガランチャも歌っていた。しかしきれいなだけで、感動を呼ばない。呼ばないというか、我輩は呼ばれない。呼んでほしいのだが。ぜひとも。
  ところがどうだろう。このカラスの歌唱。情感の深さが全体の劇性を高めている。カラスは美しく歌っているのではない。力強く歌っている。それがこの曲にはふさわしいのであろう。
  ヘーネルもきれいにばかり演奏しないように。誰かドイツ語でいってやったらどうか。ま、我輩より年長だし、もう鳥越先生のように聞く耳もたないだろうが。・・・カラスのユーチューブを確認いただきたい。