panachoの日記

辺境アジアからバロックオペラまで

天国と地獄

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(どこかの記事から借用したローマのスペイン広場の写真。ヘップバーンも民衆もいない)

 そういう次第で、当方は卒業式も何もない状態である。新年度の開始もぐっと遅れるらしく、そういうなかで蟄居しているわけである。それでも給料は相変わらず振り込まれており、何もしないのに何だか悪い気がするが、外に出ても決して得はないかわりに、中国武漢ウィルスにかかる可能性はあるわけで、やはりできるだけ閑居するの一手である。

 とはいえ、一度、川﨑大師には出かけた。不不要不不急の外出である。しかしさすがの大安の日でありながら、閑散としたものだった。露店は出ているが、暇そうにしている。飴切の店でトントン包丁の音がするが、売れないので、ただまな板をたたいているだけの音だった。それでもこの真言宗の寺には祈願の必要がある人々が、そこだけ山のように集まっていた。護摩の火が盛大に焚かれ、床で座って見ていたら、いつしか眠ってしまった。

 というわけでここ数週間で仕事場以外では唯一といってよい外出では、久しぶりなので疲れてしまうのであった。

 結局、こういう、働く必要のない天国のような生活も、しまいには地獄につながっていることを自覚することになる。寝るとき読んでいる宮部みゆきの厚いシリーズも飽きたし(最初から飽きていたのだが、なぜ人気があるのかみてみようと思って読んでみた)、これも地獄への一里塚だと感じる。こんな筋が散らばった締まりのない小説は地獄の読み物ではないか。

 イタリアから家人2が帰国した翌日くらいにイタリアで非常事態が宣言されたので間一髪だった。その意味ではわが家族も新型コロナウィルスの脅威が迫っていたのだが、こんな学園紛争以来の行事や儀式のない3月はやはり、ポキには地獄に近い天国なんだなあと気づいて、生活全般をいま立て直し中である。

 もう少しで函館に帰省しなければならないが、北海道にいま帰るのは思い病みであると思ってまだ切符をとらないでいるのである。というか4月になっても仕事は始まらないことになったので、ある意味いま帰る必要もないとはいえるのだが。