panachoの日記

辺境アジアからバロックオペラまで

シンクロニシティの苦悩?


  事務上の整理とかもあって職場に来たが、我輩の所属するところの事務員たちはもう休暇に入っていて、埒(らち)があかない。うーん。イギリス病も怖いが、準公務員病も恐ろしい。
  出掛けに数日前にNHKBSでとった「ピアノマニア」の録画を半分くらい見てきたが、ウィーンのピアノ調律師の日々の奮闘がテーマである。その前にはどこかでニューヨークの元郵便局員夫婦が屈指の現代美術コレクターとなるドキュメンタリーをみたが、年末は知的教養番組っぽいのが多くて、楽しめる。究極の娯楽は知的教養だからである。
  それにしてもピアノマニアの主な話はエマールというフランスのこれまた屈指のピアニストがフーガの技法を録音するのにあわせてこの調律師がどんなに苦労するかという話である。エマールはウィーンの楽友協会で録音したのかあ。変なこところでやるなあ。
  実はエマールのフーガの技法が入ったバッハ全集みたいなのをちょっと前に注文したのである。というかエマールのそれを買おうとしたが、ポリドール?の全集のなかに入っているし、そこにはポリーニ平均律第1巻も入っている(第1巻のみ)。
  おまけにケネス・ギルバートのチェンバロのが1,2枚入っている。ヤフオクでバラで売っているやつの原本?なのである。だから迷わずこちらの全集みたいなほうを注文した。アマゾンのほうが安いのでそっちで買ったら届くのは一カ月から二カ月後だった。ま、急ぎはしない。
  と悠長に構えていたら、愕然としたのがギルバートの10枚組のバッハ鍵盤音楽のセットが出ると予告が出ている。うーんーんーんーひひ。まずかった。こっちを買うべきだった。いつもこういう風になるのはなぜなのか。シンクロニシティの苦悩をまた味わってしまった。
  ギルバートはもう新曲はでないだろう。そういうお歳なのだ。グールドくらいなはず。フーガの技法をもっているが、これはとてもうまく弾いている。音がいいぶん、ヴァルヒャに匹敵する。だから遅かれ早かれ集めようとは思っていたのだが、何枚も重複するようだと、やはりがっくりくるわけである。ちちちちちちちちち、ちまき一つください。
  ともあれフーガの技法はどうもバッハ生前に一度完成していたらしい。ギルバートはその初稿で弾いている。昨日聴いた女流のマクレガーのでは終わる1、2曲まえに例の突然の休止がくる。そしてまた新しい曲が続くということになっていて、最初は驚いた。
  フーガの技法が中断して虚空に響くところで、バッハは死んだんだなあと感慨にひたるのがかつての音楽青年の作法だったはずではないか。日進月歩の学術的発展もまた恐ろしい。
  ということでもう3時。やはりベト君の中期を聴く。
  あ、ちなみにケネス・ギルバートはケント・ギルバートとは無関係である。念のため。といってもわかる人はもう少ないか。