panachoの日記

辺境アジアからバロックオペラまで

世界史への関心が世界的に高まる


  大澤真幸のシリーズ第3巻『世界史の哲学』東洋篇。700ページ以上あるが、ベストセラーのようである。3200円。
  こういうふうな世界史を扱うものは今では数多い。柄谷行人のもよく売れたようだし。分厚い本は大体が文体が簡単なのでわかりやすい。大澤のも例外ではない。
  でもなぜ哲学なのか。彼は社会学者ではないのか。社会学者として書くには手持ちの材料がないということだと我輩は考える。
  この本は、贈与の論理に関する文明論的差異(東西の)から西洋の世界制覇と東洋(中国、インド)の非制覇を考えるということが主眼である。だからある意味優秀な世界史受験生のような記述が多く、どこにも書いてあるような答えで満足してはいけない、と大澤はいうのだが、当の大澤自体がそういう答えで満足しているというか、それ以上のつっこみがある部分を理解していないように思える。世界史の社会学を書くべきなのではないかと思う。
  でもそうするためには結構長い読書や文献渉猟の道のりが待っているわけで、もうそういう時間は彼にはないんだなあという印象である。それにしてもすらすら読めるなあ。かつての大澤本では到底想像できなかったことである。大人になったのか、あるいは在野で売る必要があるからか。昔のような読めない本とはどこかでつながっているのだろうか。ケアに関する上野千鶴子の本が初期の勁草書房の本とのつながりがみえないのと同じだろうか。
  職場にて。