panachoの日記

辺境アジアからバロックオペラまで

バガン----この世の天国

  
  もしこの世に天国があるとすれば(って変じゃね?)、それは中部ミャンマーにある世界3大仏教遺産の一つ、バガンをおいてほかにはない、ということを今回の旅で悟った。
  楽園ならどこにもある。アメリカ、ヨーロッパ資本の入ったリゾート施設、たとえばパリの高いホテルとビーチなんか、楽園ではないか。しかし天国というのはもっと別だ。
  天国は概念的に定義しにくい。どうなっているのか。時間は静止しているのか、喜怒哀楽はないのか。労働することもないのか。そこでの人間関係?はどうなっているのか。この世の人間関係は、しばしば地獄である。そもそも苦しい生活を強いられた人間の生み出した幻想でしかないのだから、定義などできない。

  しかし何とも形容しがたいが、これが天国ではないかと思える瞬間なり、場所なり、達成なり、あるいは恩義なりというものがある。バガンはそのいずれの意味でも天国であった。
  大都会ヤンゴンの雑踏を離れてプロペラ機で降りたさきは、空港を出た瞬間から、整備された美しい道と、もうそこかしこにある寺院・仏塔の花咲く解脱空間だった。



  僧院の中はひんやりしている。ある建築家がレンガの積み方の精緻さがその理由であると同行者に語っていた。でも古いと1000年も前の建造物なのである。よくあると思ったのは800年前くらいのもの。当時日本はどうだったか。鎌倉時代?その頃のものがいまだ普通に何千も残っている。灼熱の太陽の下で広い平原のそこかしこに息づく無数としか思えない大小の仏教群。圧倒されるしかないではないか。
  空の青、仏塔のレンガ色、大寺院の白と金、地表をおおうラテライトの赤。まことに対照の妙はつきず、そこに高い木の緑が映える。当然、陶然となる。呆然ともなる。唖然ともなる。そしてそれが自然である。